アラ還暦、独学で電検三種一発合格
アラ還暦のサラリーマンはいろいろな事を考えます。「役職定年」「嘱託雇用」「別会社への再就職」「衰えていく体力と気力対策」「老後の資金」等々。
「電検三種にトライして、自分の意欲と知力の現状を把握してから今後の方針を決めよう」と考えて、以前から気になっていた電検三種試験(第三種電気主任技術者試験)を独学で受験し,1回の受験で合格できました。
学生時代に身についていたはずの「試験勉強のコツ」はすっかり錆びついていて、試験勉強は、若いころとは違う困難がありました。もし「アラ還暦」向けの勉強方法が事前にわかっていたら、もっと効率的に試験勉強ができたと思います。というわけで、アラ還暦の電検三種試験合格を検討中のご同輩の方々の参考になればと思い、私の独学勉強経験をお話しします。
このブログが対象とする方
アラ還暦(60歳近辺)の(元・現)電子回路技術者(弱電技術者)の方、具体的には以下の事項に該当する方に向けて、ブログを書いていきます。
- 大学で、主に電子工学等の「弱電」系学科を学んだ方
- 技術系会社員として、電子機器の設計経験がある方
- 何らかの電力技術「強電」について、調べた経験がある方
- アラ還暦で、独学で電検三種試験合格を目指す方
電検三種免状の取得方法は二種類ある
(1)国家試験合格
年2回(2021年度までは年1回)実施される国家試験において、以下の4科目全てに合格する必要があります。科目合格も認められていて、合格した科目について翌々年度までは受験する必要はありません。
- 理論
- 電力
- 機械
- 法規
(2)認定校卒業+実務経験+面接
認定校を規定の単位を取得して卒業し、その後所定の実務経験を積んで、産業保安監督部の面接に合格すれば、国家試験を受験することなく電検三種免状を取得するルートもあります。
このブログでは国家試験ルートを記述します
このブログでは電力機器(発電、送電、変電、モーター)関連の仕事の経験がない方を対象としていますし、私は(認定校+実務経験+面接)のルートについての知識はありませんので、国家試験合格ルートに特化してお話します。
アラ還暦から見た電検三種試験の特徴
出題範囲が広いと感じました。
「強電」の試験ですので大半は「強電」分野の出題ですが、これに加えて、熱力学、トランジスタ回路、デジタル回路、化学(mol数を用いた計算)、力学等「強電」以外の分野からの出題もあり、出題領域は広範囲に渡ります。
フルタイムの仕事をしながら受験する場合は、試験勉強に対する計画性と集中力も試されます。合格したら「まだ老いぼれていない。まだイケる。」との自信がつくと思います。
もちろん、上位資格である電検二種を狙うのも良いですが、参考書等を見る限り電子技術者がいきなり独学で二種を狙うには、かなりの勉強時間が必要だと感じました。私にとっては、アラ還暦の自信をつけるには電検三種が最適でした。
アラ還暦の方は早期合格を
退職後も働く方は、新職種や新環境への適用のための努力時間が必要となり、電検三種のための勉強時間が確保しづらくなると思います。加えて、我々アラ還暦世代は、気力も記憶力も日々落ちてきますので、後になるほど合格の可能性が下がると思います。
できれば一回か二回の受験で、定年前に4科目すべてに合格したいものです。
独学での勉強方法(時期と内容)
私が実施した科目別の勉強時期を下図に示します。新型コロナ禍で外出自粛期間中でしたので、勉強に集中しやすかった面もあります。

「法規」は最後に勉強する、というセオリーに反して「機械」の前に「法規」を勉強しました。これは「理論」「電力」と計算問題が多かったので、計算に対する息切れが生じ、この対策として暗記系科目だと思っていた「法規」を前倒ししたためです。しかし、「法規」も計算問題があり、これを主体に勉強したので、結果的には大きな息切れ対策にはなりませんでした。電検三種合格のためには計算からは逃げられませんね。
実は、「機械」の勉強時間が時間切れでほとんど確保できませんでした。つまり試験勉強の開始時期は4月10日頃から(試験の5カ月前)では遅すぎでした。「機械」について自信をもって試験に臨むためには最低一カ月間の勉強は必要だと思いますので、もし私が過去に戻れるとすれば、試験勉強開始は3月初旬(試験の6カ月前)にすると思います。
従来、電検三種試験は年1回の実施でしたが、令和4年度からは年2回実施されます。これに伴い令和4年度の電検三種試験は8月と(令和5年)3月の二回実施されます。
試験勉強にあてた時間は以下のとおりです。
- 平日帰宅後 1時間
- 休日 午前 2時間半
- 休日 午後 3時間半
アラ還暦の独学勉強方法のヒント
私が気付いたアラ還暦用の試験勉強のヒントです。
- 休日の勉強時間の合計は6時間が限界。それ以上は集中力が続かない。(学生時代なら可能であった終日勉強などとてもムリ)。
- 頭が冴えるのは午前中だけ。考えて理解する作業は午前中に、類似問題の数をこなす作業は午後に実施しました。
- 一夜漬けでは覚えられません。公式は類似問題を何個も解いて頭に刷り込んでいきます。(したがって土壇場での詰込み型ではなく、計画的な積み上げ型の勉強が必要です)。
- 問題を解く上での不明点はネット(特にYouTube)を活用する。(わかりやすい解説のコンテンツが多数あります。ネットが無かった私の若い頃とは効果的な勉強方法が変わっています)。
- 計算力が落ちています。電卓を使っても悲しいほど計算を間違えます。練習問題回答は「立式できたら終わり」では試験本番で得点できません。必ず結論の数値まで算出しましょう。
電卓選定の重要性
電検三種試験は「一般的な電卓」の持ち込みができますが、関数電卓の持ち込みは禁止です。ただし√(ルート)計算機能付き電卓の使用は認められています。みなさんは普段の仕事では関数電卓をご使用だと思いますので、試験場では普段とは異なる、一般電卓を使用することになります。
電卓の大きさ、表示桁数、底面の滑り止めの有無、メモリクリアキーの有無等々、一般電卓といえども電検三種試験への向き不向きがあります。「電検三種」「電卓」でネット検索すれば、各種情報が入手できますので、ご自宅に試験向きの電卓がなければ、この際、試験用の電卓を新調する事をお勧めします。(一番重要なのは、電卓のキーの堅牢性かもしれません。試験勉強中に、自分の計算ミスに対するイライラを電卓にぶつけけても電卓が壊れないように(笑)。)
電卓を購入する場合は早めに入手して電卓の操作に慣れておきましょう。
令和5年度から、電検三種試験は「従来通りのペーパーテスト」と「CBT試験(Computer Based Testing)」を選択できるように変更されました。CBT試験とは、出題も回答も試験場のパソコンを利用する試験方法です。CBT試験を選択した場合は、電卓ではなく試験に使用するパソコン上の計算機アプリを使用するという情報がありますが、アプリの使い勝手等の詳細は不明です。
ノートアプリの活用
「紙と鉛筆」と「パソコンで動作するノートアプリ」を次のようにを使い分けました。
- 問題演習は「紙と鉛筆」
- 要点や公式の暗記メモは「ノートアプリ」
ノートアプリは、自分なりの要点リストの作成や、試験当日用の直前確認ペーパーを印字作成する際に便利です。なにより、パソコンとスマホのどちらからでも手軽に復習できのが便利でした。
「デジタルノートアプリ」で検索すれば、各種アプリの解説サイトが複数見つかります。ノートアプリでは複雑な数式も入力できるものがあります。最近の学生は、学校の授業でノートアプリを使用する事もあると聞いています。アラ還暦の私も使ってみると便利でした。
電検三種合格後の変化
電柱や鉄塔の上の方を見て歩くようになりました。「送電線にダンパがついている」「このお店は高圧受電だ」「これは単相変圧器V結線だな」といった感じで、楽しく道路を歩けます(笑)。(交通事故に注意を!)
キュービクルの点検も見学させていただきました。二次系の配線は太い! 力率改善コンデンサは大きい! 等々新たな発見が多くありました。なにより電子機器とは迫力が違います。
実際の機器の操作には多数の注意点があり、誤った操作は事故につながるとの事でした。機器を操作する責任は重く「電気保安の現場に出るためには、十分な実務経験が必要」だと実感しまた。
確かな知識を持って現物をみると楽しいです。これは 分野を問わず技術者共通の感覚だと思います。この感覚が残っていれば、アラ還暦でも新しい分野に挑戦できそうに思います。
留意いただきたい事項
基礎知識や適した勉強方法には個人差があると思います。皆様が勉強方法を決める際は、ご自身の責任と判断で行っていただくようにお願いいたします。