電検三種「理論」独学勉強手順
「理論」は電検三種の基本ですので、最初に手を付けました。私の「理論」の勉強手順は以下のとおりです。
- 「理論」の参考書を通読
- 動画サイトの電検三種受験動画で基礎を勉強
- 過去問を5年分を3周解く
「技術者人生のまとめ」という観点では、不明点を十分掘り下げて勉強するのも良いですが、一方で、限られた期間内で合格点をとれるまでの実力をつける必要もあります。私は「深堀」は概念が納得できる程度に留めて、試験合格に重点を置きました。
独学Step.1 参考書で全体像をつかむ
「まず全体像を把握して計画を立てる」事は仕事も試験勉強も共通です。これは長く仕事をされてきたベテランの皆様は十分ご存じの事と思います。
最初に「理論」の参考書を通読して、出題範囲と出題レベルを把握します。私は「電検三種 これだけ 理論 (石橋千尋著、電気書院)」を使用しました。参考書に記載されている練習問題も解いてみますが、解き方が解らなければ飛ばします。結局半分の問題を飛ばしましたが、全体像の把握にはこれでOKでした。
通読の結果、出題範囲が広くて出題される問題の質も高いことが分かりました。丸暗記では問題は解けず、基本を理解している事が必要と感じました。これで試験対策の方針が建てられました。
同時に「学生時代に勉強した覚えがある」事項が多い事にも気づきました。「全くの未知の勉強をするのでは無い」とわかって、今後の勉強に取り組む不安が小さくなりました。
独学STEP2. 動画サイトで基礎を学ぶ
アラ還暦にとっての独学勉強法として学生時代と最も異なるのが試験勉強における動画サイトの活用です。
電検三種に関する講義の動画が複数投稿されていますので、これを活用すれば勉強が効率的です。私が利用した動画は、YouTubeで「電験合格」で検索してください。電検三種4科目の考え方と問題の解き方が、きれいな板書とともに丁寧に解説されています。
上述の動画において、「理論」科目としてアップロードされている動画は(演習編も含めて)すべて視聴し、動画を見ながら同時に自分で紙と鉛筆で解くことにより理解していきました。覚えるべき公式はノートアプリに書き込んでいきます。この動画は本当に有益で、アップロードされた方には感謝申し上げます。
独学STEP3. 過去問を解く
「理論」は多少の知識の下地があったので、上述の動画で基本を理解できたら次は実際に過去問を解いていきました。過去問集は書店やアマゾンで購入可能です。
過去問の解き方が分からない場合は長時間悩まずに、YouTubeで「出題年 理論 問番号」で検索して解法の動画を見つけて理解していきました。それでも不明な事項はネットで検索するか、STEP1で使用した参考書を辞書替わりに使用して理解していきました。
過去問は過去5年分を3周解きました。1週目は半分以上の問題が回答不能で、上述のYouTube+ネット+参考書を活用して解法と基本事項を頭に入れていきました。2週目は1週目で回答できなかった問題を、3周目は1,2週目で回答できなかった問題を解き込んでいきました。3周目でも正答できない問題が1割程度残りますが、試験は60点で合格ですから、深追いせずにここで止めておきました。
電検三種「理論」 電子技術者の関門項目
私が手こずった項目は、多くの電子「弱電」技術者共通の項目だと思います。あらかじめ関門項目が分かっていれば事前に覚悟ができると思いますので、関門項目を紹介します。
磁気回路
電検三種 理論 平成29 問17が出題例です。(ネットで検索すれば問題が見つかります。)
コンデンサに関する事項は高校生時代に勉強ましたが、磁気回路問題は親近感がわきませでした(大学で電磁気学をサボっていた証拠です。。。) 私は時間をかけて原理原則(磁場H,磁束密度B,磁束φ,磁気抵抗Rm等)から勉強しなおしました。ここをしっかり理解すれば磁気回路問題の回答が楽になります。
鳳テブナンの定理
電検三種 理論 令和2年 問10が出題例です。
鳳テブナンの定理は大学の授業で学んだ記憶がありますが電子回路の世界ではほとんど使用しません。定理の使い方を完全に忘れているため、この定理を用いて解く問題は解けそうで解けません。あらためて定理を頭に入れなおしました。
三相交流
電検三種 理論 平成29年 問16が出題例です。
三相交流は、他の3科目でも出題されるので電検試験の1丁目1番地です。しかし、われわれ電子技術者は三相交流にはほとんど馴染みがありません。ここは観念して基礎からコツコツと理解するしかありません。「理論」科目の勉強で一番時間を要する項目です。
三相交流は電検三種の勉強の難所のひとつです。多少とも元気がでるように、私の悟り(笑)を次に示します。
そもそも三相は3つの電圧源から3つの負荷に給電する方法。各相の瞬時電力の和は常に一定、回転磁界を得られる等の特徴がある。
本来ならば、必要な電線はホットとリターンのペアが3つ、すなわち6本必要となる。しかし3つのリターン電線の電流の和はゼロなのでリターン電線は無くても支障がない。そこでリターン線を省略して、3つのホット線のみで3つの負荷に給電している。
だから、「電圧を測れ」と言われても、現実に存在するのは3本のホット線だけなので、ここから2本を選んで測る事しかできない。つまり線間電圧しか測れない。
一方、回路の動作は、3つある電圧源と負荷のペアにおいて、1つのペアだけに着目し(すなわち1つの相に着目し)、「Y結線でリターン線があるもの」として考えると、単相と同様に考えられるので理解しやすい。つまり回路動作は相動作で考える。
この「現実」と「理解しやすさ」を結びつけるものとして「線間」「相」「Δ-Y変換」「ベクトル図」がある。面倒なのだが、本来6本必要な配電線を3本に半減し、人類に多大な貢献をもたらした技術なのだから、「強電」を学ぶ者は、この「面倒」は前向きに受け入れるべきである。
注:電検三種の三相を勉強する上でのマインドセットを述べたもので、電気工学的に完全に正しいとはかぎりません。
計器の種類
電験三種 理論 令和元年 問14が出題例です。
最近の電子回路用の測定器は、ほとんどデジタル表示なので、指針の動作原理は気にかけません。あらためて問題で問われると知識の無さがよくわかります。各種測定器の動作原理とJIS記号は参考書で暗記しました。
電検三種「理論」の楽しい項目
IC全盛ですが、トランジスタ回路、OPアンプ回路の出題も健在です。バイアス、等価回路、hパラメーター等は、学生時代&回路設計者だった若い頃を思い出す項目です。懐かしい思いを感じるご同輩も多い事とおもいます。
「理論」科目の国家試験結果
60点以上で合格のところ、自己採点で85点でした。
留意いただきたい事項
基礎知識や適した勉強方法には個人差があると思います。皆様が勉強方法を決める際は、ご自身の責任と判断で行っていただくようにお願いいたします。